近年、医薬品を過剰摂取する薬物乱用が若い世代を中心に増加してきています
せき止め薬や鎮痛剤などの一般用医薬品(市販薬)を過去1年間に乱用目的で使った経験がある15~64歳は0.75%で、約65万人と推定されることが、厚生労働省研究班の初の全国調査で分かった。また、違法薬物の年間使用経験は大麻が約20万人、覚醒剤は約11万人だった。
近年、10代を中心に入手しやすい市販薬の過剰摂取による薬物中毒・薬物乱用が広がってきており、社会問題となっています。違法薬物よりも安価で所持していても捕まらない医薬品での乱用は発見されにくく、広がりをみせています。
ゲートウェイドラッグ
ゲートウェイドラッグとは、依存性や中毒性の高い薬物の「きっかけ」や「入口」となる物です。
これまでは、未成年からの喫煙や飲酒などが言われてきましたが、近年では、「大麻」や「医薬品のオーバードーズ」がきっかけに繋がってきています。
「最初は6錠入りの鎮痛剤を全て飲んだ。エスカレートしていき、嫌なことがあるたびに84錠入り瓶を1瓶、2瓶と増えていった」
興味本位や快楽を得るためではなく、学校生活や仕事、人間関係など、ストレスを抱えた若者たちが、「嫌なことを忘れたい」や「ハイになりたい」という理由で、入手しやすい「医薬品」を過剰摂取することにより薬物依存に陥っています。
インターネットで情報、医薬品が手に入る時代
SNSで情報を入手しやすく、同じ境遇の人と巡り合うことが多くなりました。医薬品のオーバードーズをする若者はほとんどが、そこから情報を得ています。
また、医薬品も手軽にインターネットで購入することができます。
オーバードーズにはよく使われる製品がいくつかあり、それらを「指名買い」するケースも見られます。厚生労働省が「乱用のおそれのある医薬品」の販売は、原則1人1箱だけなどの規制をしていますが、それも功を奏していません。販売店の対応だけでなく、学校での教育や啓発など、正しい医薬品の知識の普及が必要とされています。
中毒症状や離脱症状が現れます
医薬品のオーバードーズによる中毒症状は、違法薬物よりもひどいと言われています。主な症状は、幻覚や興奮状態、強い幸福感や、思考力の低下、知覚過敏などです。さらに、体内の薬剤の成分が抜ける「離脱症状」がひどく、強い不安感やけいれん、動悸、吐き気、悪寒、さらには力が入らず動けなくなる場合もあります。市販の医薬品の場合、いくつもの成分が入っているため、その症状がひどくなると言われています。
医薬品の成分の中には、通常は安全な成分でも、大量に服用すると臓器不全になったり、亡くなったりしてしまうケースもあります。
「お薬」は、病気やケガを治す手助けをするためのものです。「お薬」が皆さまの健康を守るものとして役に立ってほしいと、
私たち薬剤師は願っています。日本だけではなく、世界の若者の間で医薬品の「オーバードーズ」が問題になっています。
悩みや苦しみをごまかすためにと、薬物を使うことはやめてください。
薬物事犯検挙者の近年の動向
令和5年の薬物事犯全体の検挙者は、前年より増加しています。中でも、大麻での検挙人数は、過去最多を更新し、初めて覚醒剤の検挙人数を上回りました。
大麻には危険性は少ないという誤った情報により、興味本位で手を出してしまい、やめられなくなっている人が多いと考えられます。薬物依存という意識が少なく治療や支援のニーズが乏しくなっているのも事実です。
大麻中毒者は、時間感覚の低下や記憶力の低下、筋肉の反応の低下がみられます。またうつ病の原因にもなりやすいと言われています。
薬物への依存に陥りやすい背景として、「自己肯定感の低さ」や「人間関係の悩み」、「本音を言えない孤独さ」などの心理が関係しています。その他にも、自身の健康や家族・家庭、社会全体の問題も複雑に影響しています。安心して人に相談することができず、薬物という物質を通じて、心理的苦痛を自身で和らげようとしています。
薬物依存になってしまうと、離脱症状も現れるので「止めても苦しい、薬物を続けるのも苦しい」という状態が続いてしまいます。
悩みがあったり、悩んでいる友人がいたら相談してください。SNS等でいつでも相談できる環境にあります。