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押すところ、引くところ、両者の兼ね合い
薬剤師の職務は、関係法規によって一部規定されている。
薬剤師法
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=335AC0000000146
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=335AC0000000145#104
保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=332M50000100016
そこには、「行わなければならない」、「させなければならない」、「確かめなければならい」等と表現された『義務』が、そして、「努めなければならい」との『努力義務』がいくつか書かれている。
それらは、医薬品の適正使用を守り、使用者の安全と安心を達成するために設けられたに他ならない。
そのため、薬剤師は、「きっちりと」仕事をしなければならないことになる。
ところが、それが前に出過ぎると、例えば患者との間に諍いや誤解、あるいは不安や怒りが生じてしまうことがある。
なぜか、一言でいうと患者が置き去りにされているから。(そのように思ってしまう人も中にはいる。あるいは、いちいち言われなくても、それくらいのこと分かっていると思う人もいたりする。)
薬剤師の目の前には、患者またはその家族等がいる、その人たちの希望や反応などに耳を傾けずに対応してしまうと、それぞの人に、千差万別の反応が現れる。(時に、頭の来るような要求をされることや、身勝手な発言、無茶苦茶な言い分などもあるが)
ただ単にうなづくだけで、何も聞いていない(理解していない)。
怒り出す。
薬局を変える。
情報センターにクレームを寄せる、etc.
『対物から対人へ』が薬機法の改正(?)で法的に根拠を持たされてしまう(義務化される)。
薬剤師は義務と目の前の患者の要望との板挟み。
義務だからと押すばかりでは、何も解決しない。
状況に応じて、患者の要望を聞き入れ、一歩引くことも必要。
絶妙なバランスの中、目の前の患者に最適な、それこそオーダーメイド医療を提供するように、職能に基づいた柔軟性が求められる。
義務を主張し過ぎると、「本当に義務をしっかり果たしているのか。」、「多くの薬局を観てきたが、どことして、薬の説明をしっかりしているところは観たことがない。」、云々、となりかねない。(といった苦情を本日受けつけた。)
薬剤師の職能(社会から望まれる任務)は、薬剤師法によると「第一条 薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。」ことである。
つまり、人々に安全な薬物療養を提供し安心して日々を暮らしてもらうことがその職能の一つである。
目の前の患者の意見に耳を傾けることをないがしろにすると、本当の安心は実現できない。
押すところ、引くところ、両者の兼ね合いが丁度良い、コミュニケーションが求められる。
極論として、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」第九条の三の3を活かせば、服薬指導の際に必要な情報が全く得られないような場合は、調剤や医薬品の販売を断ってもよいとも考えられる。
一方、薬剤師法第二十一条には、「調剤に従事する薬剤師は、調剤の求めがあつた場合には、正当な理由がなければ、これを拒んではならない。」と記されているが、服薬指導に必要な情報が得られない場合は正当な理由とはされていない。
結局、命と法律と板挟みとなるが、医療提供者としては、命を優先せざるを得ない。
さて、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」第一条の六には「国民は、医薬品等を適正に使用するとともに、これらの有効性及び安全性に関する知識と理解を深めるよう努めなければならない。」と書かれている。
国民にも努力義務ではあるが、医薬品の適正使用に関する理解が求められている。
かといって、放っておいては理解は進まない、国民が適切に医療を利用するように国が積極的に啓発する必要がある。
また、薬剤師も啓発に努める必要があるということになろうか・・・
国民自らが適正に医療を利用しようとする意識・・・それも醸成させないことには・・・薬局でのトラブルもなかなか減らないかもしれない。
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医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
(医薬関係者の責務)
第一条の五 医師、歯科医師、薬剤師、獣医師その他の医薬関係者は、医薬品等の有効性及び安全性その他これらの適正な使用に関する知識と理解を深めるとともに、これらの使用の対象者(動物への使用にあつては、その所有者又は管理者。第六十八条の四、第六十八条の七第三項及び第四項、第六十八条の二十一並びに第六十八条の二十二第三項及び第四項において同じ。)及びこれらを購入し、又は譲り受けようとする者に対し、これらの適正な使用に関する事項に関する正確かつ適切な情報の提供に努めなければならない。
(国民の役割)
第一条の六 国民は、医薬品等を適正に使用するとともに、これらの有効性及び安全性に関する知識と理解を深めるよう努めなければならない。
(調剤された薬剤に関する情報提供及び指導等)
第九条の三 薬局開設者は、医師又は歯科医師から交付された処方箋により調剤された薬剤の適正な使用のため、当該薬剤を販売し、又は授与する場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その薬局において薬剤の販売又は授与に従事する薬剤師に、対面により、厚生労働省令で定める事項を記載した書面(当該事項が電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下第三十六条の十までにおいて同じ。)に記録されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を厚生労働省令で定める方法により表示したものを含む。)を用いて必要な情報を提供させ、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わせなければならない。
2 薬局開設者は、前項の規定による情報の提供及び指導を行わせるに当たつては、当該薬剤師に、あらかじめ、当該薬剤を使用しようとする者の年齢、他の薬剤又は医薬品の使用の状況その他の厚生労働省令で定める事項を確認させなければならない。
3 薬局開設者は、第一項に規定する場合において、同項の規定による情報の提供又は指導ができないとき、その他同項に規定する薬剤の適正な使用を確保することができないと認められるときは、当該薬剤を販売し、又は授与してはならない。
4 薬局開設者は、医師又は歯科医師から交付された処方箋により調剤された薬剤の適正な使用のため、当該薬剤を購入し、若しくは譲り受けようとする者又は当該薬局開設者から当該薬剤を購入し、若しくは譲り受けた者から相談があつた場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その薬局において薬剤の販売又は授与に従事する薬剤師に、必要な情報を提供させ、又は必要な薬学的知見に基づく指導を行わせなければならない。
薬剤師法
(調剤の求めに応ずる義務)
第二十一条 調剤に従事する薬剤師は、調剤の求めがあつた場合には、正当な理由がなければ、これを拒んではならない。
(処方せんによる調剤)
第二十三条 薬剤師は、医師、歯科医師又は獣医師の処方せんによらなければ、販売又は授与の目的で調剤してはならない。
2 薬剤師は、処方せんに記載された医薬品につき、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師の同意を得た場合を除くほか、これを変更して調剤してはならない。
(処方せん中の疑義)
第二十四条 薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによつて調剤してはならない。
(調剤された薬剤の表示)
第二十五条 薬剤師は、販売又は授与の目的で調剤した薬剤の容器又は被包に、処方せんに記載された患者の氏名、用法、用量その他厚生労働省令で定める事項を記載しなければならない。
(情報の提供及び指導)
第二十五条の二 薬剤師は、調剤した薬剤の適正な使用のため、販売又は授与の目的で調剤したときは、患者又は現にその看護に当たつている者に対し、必要な情報を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない。
保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則
(処方せんの確認)
第三条 保険薬局は、被保険者及び被保険者であつた者並びにこれらの者の被扶養者である患者(以下単に「患者」という。)から療養の給付を受けることを求められた場合には、その者の提出する処方せんが健康保険法(大正十一年法律第七十号。以下「法」という。)第六十三条第三項各号に掲げる病院又は診療所において健康保険の診療に従事している医師又は歯科医師(以下「保険医等」という。)が交付した処方せんであること及びその処方せん又は被保険者証によつて療養の給付を受ける資格があることを確めなければならない。
(調剤の一般的方針)
第八条 保険薬局において健康保険の調剤に従事する保険薬剤師(以下「保険薬剤師」という。)は、保険医等の交付した処方せんに基いて、患者の療養上妥当適切に調剤並びに薬学的管理及び指導を行わなければならない。
2 保険薬剤師は、調剤を行う場合は、患者の服薬状況及び薬剤服用歴を確認しなければならない。
3 保険薬剤師は、処方せんに記載された医薬品に係る後発医薬品が次条に規定する厚生労働大臣の定める医薬品である場合であつて、当該処方せんを発行した保険医等が後発医薬品への変更を認めているときは、患者に対して、後発医薬品に関する説明を適切に行わなければならない。この場合において、保険薬剤師は、後発医薬品を調剤するよう努めなければならない。