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「薬について教えて欲しい」 なぜ、薬局や病院の薬剤師に聞かないのだろう?
「薬について教えて欲しい」
そんな相談が、しばしば寄せられる
それらを大まかに分類すると次のようになる
1)自分の疾病治療に適しているか
2)良く効く薬はないか/処方されている薬以外の薬はないか
3)用法用量について(過量投与か否かなどを含む)・薬の服用期間について(風邪薬は症状が良くなったらやめてよいか?・高脂血症の薬を飲んでいるが検査値が下がったので止めてよいか?・等)
4)相互作用について
5)副作用について
6)家にため込んでいる薬の再利用(使用期限は大丈夫か・自己判断による服用・処方されたもの以外への使用など)
7)薬は安全か(薬情に恐ろしい副作用が書いてあって不安になった・石油からできているので危険・ジェネリックは品質が悪いので危険・雑誌等に危険な薬と書いてある等)
8)治療または調剤過誤を一方的に問うもの
1-3)は、医師の診断と治療方針に係る質問で、何とも答えにくい(正直、判断できないし、迂闊には答えられない)
それらは、医師と患者の間で説明と納得(理解)の成立が必要だが、それが十分でないことが原因
場合によっては、セカンドオピニオンなどが必要
3)については、薬剤師による介入(腎機能等の評価、薬の効き過ぎによる副作用の)も必要になる場合もある
薬局等と情報センターの決定的な違いは、問い合わせ者個人の背景(状態)を把握できているか、できていないか
いきなり、薬の量は多いのでないかと電話口で言われても、判断材料に乏しすぎる
対面している薬剤師でなければ適切に対応できない。
4)については、一般的な対応は情報センターでも可能だが、それこそ、薬局等の薬剤師範疇
服薬指導の際に、しっかり、患者から情報を得、薬剤師が判断することで、ほとんどの問題は解決するはずだが・・・
仮に、患者が調剤の際に確認し忘れた(聞き忘れた)としても、いつでも調剤を受けた薬局に確認できる
しかし、なぜか、薬局ではなく、わざわざ電話帳をめくったり、いろいろな相談窓口などに問い合わした結果、情報センターに相談が寄せられる
薬局に確認することが憚られる理由は、何か、いつも疑問に思う
そんなに、薬局の敷居は高いのだろうか
5)について、実際、薬の副作用かどうか判断することは、難しい
どう考えても相談者の思い込みに過ぎないと思われるような事例も少なくない
薬のアレルギーだと言って、皮膚にボツボツが出た等、電話相談が寄せられる
しかし、ボツボツの様子は、耳で聞くのと、実際にそれを見るのとでは大違い
また、普段の様子なども知っていないと判断材料に欠ける
副作用かと聞かれれば、その可能性を100%否定し得ないが、副作用と明言することはできない
最終的には医師の判断が必要だが、対面での薬剤師の役割も大きい
6)について、症状が良くなれば薬を飲み切るのではなく、途中で止めてしまう人が案外多い
捨てるのはもったいないからと冷蔵庫などに、ため込んで、同じような症状が出たときに、自己判断で使用する
場合によっては、いつ処方された薬かもわからないようなものでも平気で使おうとする
処方薬については、厳密には、処方された日数を超えての使用は、適正な医薬品使用とは見なされない
そのため、重篤な副作用等が発生した場合であっても補償の範囲外
余ったら冷蔵庫で保管しておいてください等とは軽々しく服薬指導できない
また、一人の子供に処方された薬を、兄弟などに飲ませようとする相談も時々寄せられる
それも適正使用外
使っても大丈夫なんて、言うことはできない
何かあったら自己責任
「医薬品の適正使用」に関する啓発が必須
薬局での服薬指導の際、学校の薬の授業の際、公民館講話の際、市民健康祭りの際、いろいろな場面で薬剤師が正しい知識を伝える必要がある
少なくとも調剤した薬については、服薬指導の際に十分に説明し、患者の理解を得る必要がある
これらの相談も情報センターではなく、調剤してもらった薬局にするのが本来だろう
7)について、誤解を解くのは、薬剤師の仕事
一般的な事例に関する説明に関しては、情報センターでも対応が可能
しかし、薬情の記載内容に関しては、薬局の責任において対応する必要がある
重篤な副作用の説明に関して、患者が薬の使用をやめてしまう危険性があるため、服薬指導の際に説明を避けている(省いている)事例が少なからずあるのではないかと思われる
しかし、安全に使用してもらうためには、重篤な副作用の初期症状などをしっかりと説明し、患者に理解してもらう必要がある
その説明を省いてしまうと、場合によっては、薬剤師の説明義務、注意義務等の不履行を問われかねない
8)正直、この手の相談は気が滅入ってしまう
医師や薬剤師の過誤とは考えられない場合であっても、患者側は全面的に責任を医師や薬剤師に求めてくる
しかし、電話の内容だけからは、全体像がつかみきれない
医師や薬剤師が悪いだろうと念押しされても、同意することはできない
結局は、当事者間の問題となる
ずいぶん前、スティーブンス-ジョンソン症候群(SJ)で長期入院を強いられ、かろうじて命をとりとめた方から薬局薬剤師の責任を問うような相談が寄せられた
医師の説明と内容が食い違い、薬剤師に責任があるというものだったと記憶している
しかし、SJの発症は、患者の体質などによるところが多い
いくら適正に使用したとしても、様々な因子が重なり、発症することがある
少なくとも、服薬指導の際にSJの初期症状などをしっかり説明し、それらが現れた場合には速やかに医療機関を受診するよう伝え患者に理解してもらっておく必要がある
そうしておけば、少なくとも薬剤師の説明義務や注意義務違反を問われることはほぼない
それができてなければ、薬剤師の責任を問われても仕方ない
患者側の一方的な情報や思いを情報センターに伝えられても、医師や薬剤師が実際にどのように対応したか等の情報が十分に分からない
いくら薬剤師が悪いだろうとすごまれても、「はい、そうです」とは決して言えない。
鹿児島県薬剤師会という名称から、公的機関、それも、行政処分権を持っているものと思われている節もあるが、それは、全くの誤解
そのあたりを説明すると、決まって落胆したような雰囲気、あるいは、なんだ同じ穴のムジナか的雰囲気が電話の向こうから伝わってくることがある
どうにかしてあげたいけれど・・・そればかりは・・・無力さに打ちひしがれる瞬間
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さて、先ほど受けた問い合わせ、「速効型インスリンは、薬の説明の紙に食前30分に使用するとあるが、食事の数分前に使用してもよいだろうか」
なぜ、30分前に注射する必要があるのか、その部分の説明が十分でないと(あるいは十分理解してもらえていないと)ことが、おそらく原因