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薬剤師の需給動向予測・・・かかりつけ薬剤師・薬局の多機関・多職種との連携に関する調査研究
「かかりつけ薬剤師・薬局の多機関・多職種との連携に関する調査研究」(厚生労働科学研究)が公表された。
https://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201824022A
その一部として、「分担研究報告書 1.薬剤師の需給動向の予測および薬剤師の専門性確保に必要な研修内容等に関する研究 」 が報告されている。
研究要旨
薬学教育6年制を卒業した薬剤師が平成24(2012)年以降、毎年輩出されている。これまでの間に、「患者のための薬局ビジョン」が策定され、地域包括ケアシステムの下でかかりつけ薬剤師・薬局の取組を進めていることや健康サポート薬局の届出が開始されることなど薬剤師を取り巻く環境も変化している。薬剤師の適正数を予測することは、将来的な薬剤師の積極的活用を検討する上で喫緊の課題である。
薬剤師の需給動向の予測は平成30(2018)年度から平成55(2043)年度の25年間を推計期間とした。
薬剤師の需要予測では、薬局や医療機関に従事する者が前回調査と同様に薬剤師数全体の約8割を占めていることから、今後の処方箋枚数、病床数の変動についての推計から薬剤師需要を予測した。処方箋受取率(医薬分業率)が平成27(2015)年に70%を超え、年々増加傾向が続いていることから、75%を上限に推移するとした。今後は、高齢者人口、投薬対象者数の増加による処方箋枚数も増加するが、処方箋に基づく調剤業務のみならず、かかりつけ薬剤師・薬局として対人業務(在宅、医療機関等との情報連携等)の充実も求められている。また、健康サポート薬局の取組など地域住民へ健康維持・増進に関する相談や一般用医薬品等の提供などセルフメディケーション推進のための取組も必要な役割である。これらの業務に取り組むことにより薬剤師の需要は高まると考えられる。一方で、情報通信技術や機械・AIの活用などによる対物業務の効率化も今後必要と考えられ、これにより一層対人業務への転換が加速すると考えられる。
薬剤師の供給予測では、直近3年間の薬剤師国家試験の傾向から、当初は同程度の合格者数(約9,800人)が毎年合格すると推計しているが、その後は、今後の大学進学予定者数が減少すると見込まれていることから、同程度の割合で毎年減少すると仮定して供給数を推計した。ただし、需給の将来推計に関して、大学の入学者・卒業者の数のほか、国家試験の合格状況によっても変動するため、あくまで現状の推計をもとに機械的に試算したものである。
以上より、薬剤師の総数としては、今後数年間は需要と供給が均衡している状況が続くことになるが、長期的に見ると、供給が需要を上回ることが見込まれているものの、この推計は薬局や医療機関における薬剤師の業務の実態が現在と変わらない前提で推計したものであり、今後、薬剤師に求められる業務への対応や調剤業務等の効率化等の取組によって、薬剤師の必要性は変わりうるものであることに留意する必要がある。また、将来的な大学の入学者数・卒業者数、国家試験の合格状況によって供給は変動しうるものである。今回の供給数は、今後の人口減少社会を踏まえ、大学進学予定者数の減少予測をもとに推計しているが、薬剤師総数の観点では、今後、現在の水準以上に薬剤師養成が必要となる状況は考えにくい。さらに、都道府県内における二次医療圏ごとの人口当たりの薬剤師数に差があるように、地域での偏在も考えられるため、今後の人口減少社会における薬剤師の需要の変化も踏まえつつ、詳細な需給動向も検討すべきである。
薬剤師の専門性については、免許取得後の資質向上に向けた取組のため、生涯学習を通した研鑽が必要であり、必要基盤としてはジェネラリストとしての職能向上を目的とした自己研鑽が求められる。現在運用されている専門薬剤師、認定薬剤師等の認定者数は、薬剤師総数を考えると必ずしも十分とはいえない状況である。生涯学習を一層進めるために研修の受講率を上げることが必要と考えるが、生涯学習の内容が要件や義務になることで、研修受講などの生涯学習を行うための「手段」が「目的化」することのないよう注意が必要である。また、今後の生涯学習については、ジェネラルな部分において、倫理的な内容を多くした研修の充実が望まれる。