公益社団法人 鹿児島県薬剤師会

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セレンに関して

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過去に、特殊な細胞の培養用培地を調製する際にセレンを利用したことがある。

購入した試薬はアンプルタイプの物であったと記憶しているが、1本ずつ専用のアルミボトルに収めれれていた。

ラベルにはしっかりと取扱いの注意事項が書かれていた。

セレンは、セレノプロテイン(タンパク質のシステイン残基の硫黄がセレンと置き換わったセレノシステインが活性中心として機能する。25種類ほど知られている)として、細胞内外の酸化、抗酸化作用。甲状腺ホルモン代謝、グルコース代謝などに関与する。

一般的にセレン欠乏症は稀であるが、長期間中心静脈栄養を実施した場合に、セレン欠乏症となることがある。

静脈経腸栄養ガイドライン第3版(2013年)」には、3か月を超えて静脈栄養を実施する場合は、セレン欠乏を予防するために亜セレン酸を利用し3~5µg/kg/日を補給する必要があるとされている。

セレン欠乏症の診療指針 2016

国内で発売されている経腸成分栄養剤にはセレンが配合されたものはあるが、輸液にはセレンが配合されたものはない。

さらに、国内で販売されている微量元素製剤にはセレンは含有されていないため、試薬を利用して輸液を調整することになる。

セレンは、毒物であり、注射剤の調整の際には、その濃度等に細心の注意を払う必要がある。

京都大学病院で、セレン注射剤の調整ミスにより患者が死亡する事案が発生した。

当該事案の事故調査委員会では、死因は急性セレン中毒と結論付けられ、院内製剤調製時の管理体制の不備等が指摘されている。

結局、院内製剤の調整に係わった薬剤師2名が書類送検されることとなった。

京都大学医学部附属病院における院内製剤事故に係る調査結果について(概要)
―高濃度のセレン注射薬(院内製剤)が患者に投与された事例―

高濃度のセレン注射薬(院内製剤)が患者に投与された事例

回の事例は、大学病院における特殊注射製剤の調製に係るものであるが、薬局においても、調剤時に同様のことは発生し得る。

今一度、薬局の調剤時における安全管理体制(手順書なども含め)の再点検をお勧めする。