公益社団法人 鹿児島県薬剤師会

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「医師の裁量権はどこまでか」との難しい質問

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処方箋への医薬品の記載

添付文書とは異なる用法

保険で査定される可能性があるからと他の薬と日数を調整することで辻褄を合わせている

そんな処方箋を受けた薬局から「医師の裁量権はどこまでか」との質問が寄せられた

問題の薬は、毎日服用する必要があり、処方箋通りでは、日数が合わない

同じ処方を毎回繰り返していれば、他の薬との処方日数に整合性がないので、添付文書通りに服薬していないことは、審査側にすぐ見抜かれてしまう

放っておいても、確実に査定されてしまう

ならば、最初から、何故、用法を添付文書から逸脱したかの理由を付して保険請求する方が理にかなっている

どうして、わざわざ、すぐにばれてしまうような手を考えるのだろう

 

「医師の裁量とは」

医師の役目は、目の前の患者(患者ごとに個人差がある)を評価し(個人差を見極め)、当該患者にとって最適・最善の医療を提供すること

そのため、原則として、各患者において臨機応変な治療が要求される(「さじ加減」=「医師の裁量」)

個々の患者の個人差には幅があるため、当然のことながら「さじ加減」にも幅が出る

したがって、裁量の範囲は明確ではない

さらに、法律上の規定もない

が、これまでの判例等を基に考えると、医療水準を基準にした「注意義務」の範囲内で「裁量」は認められることになると考えられる

さらに、必ず、裁量権には、医師の覚悟(責任)を伴う

 

医師の裁量の範囲を考える場合は、俗に55通知と呼ばれるもの、裁判事例などを参考にして考えることになる

「保険診療における医薬品の取扱いについて(昭和55年9月3日付け保発第51号厚生省保険局長通知)」(社会保険診療報酬支払基金理事長あて)(抄)https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/10/dl/s1027-16e_0004.pdf

次のような論文などもある(探せばいろいろある)

「薬剤処方と医師の裁量」 Medical Education 2015年 夏号、https://medicaleducation.co.jp/web/wp-content/themes/medicaleducation/images/pdf/me_summer2015.pdf

「【適応外使用】を考える」 medicina 48巻4号(2011年4月号) 連載 今日の処方と明日の医学 https://www.igaku-shoin.co.jp/misc/medicina/shohou4804/

「医師の裁量権と患者の自己決定権」(1)両者は「医療過誤」にどう関わっているのかhttps://archives.bukkyo-u.ac.jp/rp-contents/HO/0007/HO00070L013.pdf (学内報)

「患者の自己決定権と医師の裁量権の定義づけ」生命倫理 / 11 巻 (2001) 1 号 /https://www.jstage.jst.go.jp/article/jabedit/11/1/11_KJ00003698645/_article/-char/ja/ (少し発表から年数が経過しているが・・・)

兎も角、医師の裁量の範囲についてはケースバイケースであり、これが医師の裁量の範囲と言えるきっちりと決まったものはない

但し、医師の責任を伴い、かつ、医療水準を基準とした注意義務の範囲内でなければならない

そして、「医師の裁量権」とは、医師の権利ではなく、患者の権利であることを忘れてはならない

つまり、患者の利益になるように医師は裁量する必要がある

果たして、問い合わせのあった処方が、患者の利益となるものか、そのあたりの医師の判断が審査時の評価の基準となる(のではないだろうか)

さて、翻って、薬剤師の「裁量権」とは、何か