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調剤のあり方についての 日病薬の考え方
答申書(調剤業務のあり方について)の公表について
http://www.jshp.or.jp/cont/19/0725-3.html
令和元年7月11日
一般社団法人 日本病院薬剤師会 会長 木平 健治 殿
病院診療所薬剤師業務のあり方に関する検討会
委員長 眞野 成康
答申書 (調剤業務のあり方について)
諮問のあった調剤業務のあり方について、本検討会で検討を行ったので、 下記の通り答申する。
記
1.検討の経緯
平成 31 年 4 月 2 日に厚生労働省医薬・生活衛生局総務課長から発出された「調剤業務のあり方について(平成 31 年 4 月 2 日付薬生総発 0402 第 1 号)」(以下、本通知)では、薬剤師以外の者に実施させることが可能な業務の基本的考え方が示された。今後有識者の意見を聴きつつ更に整理を行い、 別途通知することとされている。次の通知が発出される前に本会の考え方を整理しておく必要があることから、会長の諮問を受けて検討を行った。
2. 調剤の概念
調剤の概念は、医療機関の調剤所内において行われている「薬剤の調製」を意味する『いわゆる狭義の調剤』から「処方箋の確認から薬剤の調製、薬の適正使用に資する服薬指導、効果や副作用のモニタリング・評価、処方提 案にいたる薬物治療の一連の流れ(医薬品適正使用サイクル)」を意味する『いわゆる広義の調剤』まで幅広い概念が存在しているものと考えられる。
従前より、この『いわゆる広義の調剤』をもって、本会の調剤の概念としてきたが、現時点でその考え方について変更する必要性は認められなかった。
しかしながら、調剤の概念や調剤業務のあり方を考えるとき、今後の医療や科学の進歩等に応じて、薬剤師が専門性を発揮すべき業務はさらに拡がりを見せるなど、変化していくものと捉えるべきである。
3. 薬剤師以外の者の業務範囲
前項で調剤の概念について考え方を整理したが、本通知において整理された薬剤師以外の者に実施させることが可能な業務は、「調剤」のうち、「薬剤の調製」を意味する『いわゆる狭義の調剤』に関する業務として取り扱う。 本検討会としては、本通知における調剤に関する一連の業務は、本来すべて薬剤師が実施するものであるが、医療の進歩に伴って薬剤師が行う臨床業務を充実させることを前提として、薬剤師の責任のもと、医療安全等に十分 配慮し、検証と再現ができる形で、調剤業務の一部を、やむを得ず薬剤師以外の者に補助させることは可能であると考える。 なお、薬剤師以外の者に業務の一部を実施させる場合には、予め業務手順書等を定め、薬剤師以外の者が薬学的な判断を加える余地のないように配慮 すべきである。
本通知には、薬剤師以外の者に実施させることが可能な業務として「処方箋に記載された医薬品の必要量を取り揃える行為」とあるが、そうした行為で扱うものには麻薬・向精神薬・毒薬等、取り扱いに注意が必要な薬剤が含 まれることから、薬剤の特性等によって慎重に考慮すべきであり、薬剤師以外の者に実施させる場合には十分な配慮が必要である。
病院診療所薬剤師に関連する具体的な業務として、本通知で触れられている「薬剤師以外の者が軟膏剤、水剤、散剤等の医薬品を直接計量、混合する行為は、たとえ薬剤師による途中の確認行為があったとしても、引き続き、 薬剤師法第 19 条に違反すること」や「調剤済みの薬剤を患者のお薬カレンダーや適切な管理体制の下に実施される院内の配薬カート等へ入れる行為が調剤に該当しない行為である」とする考え方は、本会として支持して差し支 えないと考える。
また、「調剤機器の積極的な活用」については、各医療機関の実情を考慮した上で、推進すべきである。
調剤業務のあり方は、上記に述べたとおり、各医療機関の機能や規模等により異なるものと考えられる。従って、薬剤師以外の者に実施させる具体的な業務については、各医療機関の実情に合わせて、当該医療機関の薬剤師の責任において個別に検討・実施されるものであり、現時点で本会が個別具体 的な業務を示すことは適切ではないと考える。
4. 薬剤師以外の者に必要な研修の実施について
薬剤師以外の者に必要な研修の実施については、各医療機関の実情に合わせて、当該医療機関の薬剤師の責任において個別に検討するものであり、現時点で本会が薬剤師以外の者に対する具体的な研修内容を示すことは適切で はないと考える。
また、薬剤師以外の者に業務を実施させる場合は、薬剤師以外の者に対する薬事衛生上の研修に加えて、倫理及び個人情報の保護や保健医療上必要な研修の実施と責任体制の構築を、各医療機関の薬剤部門の長及び医薬品安全 管理責任者に求めるべきである。
5. おわりに
諮問のあった調剤業務のあり方については以上のとおり整理した。
今後、薬剤師以外の者の業務範囲や薬剤師以外の者に対する必要な研修については、本会として調査の実施や事例の収集等を行い、引き続き検討すべ きである。
また、薬剤師法第1条に規定される薬剤師の任務は調剤のみにとどまらないこと等を踏まえ、医薬品が安全かつ適正に使用されるために、薬剤師は薬に関する業務全般について責任を持って実施すべきであること、及びそれを 達成するための環境整備が図られるよう努力していくことを本会として改めて表明すべきである