公益社団法人 鹿児島県薬剤師会

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暫くの期間ステロイド軟膏を大量に塗布することになるがドーピングにならないだろうか?

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暫くの期間ステロイド軟膏を大量に塗布することになるがドーピングにならないだろうか?

との相談が寄せられた。

使用するステロイド剤は、Very strongカテゴリー。

1日20g程度を塗布するらしい。

このような質問を受けた場合に、以下の資料等が参考になる。

それらの資料をみて薬剤師として判断し、回答することになる。・・・責任が発生する。

結論を言えば、問い合わせのあった条件であれば、使用可能と言うことになる。

ただし、糖質コルチコイドの使用はモニタリングされるので、投与経路がわかるよう書類を医師に書いてもらい携帯しておくとよい。

なお、資料を参考にしても、どうしても自力で解決できない場合は、アンチドーピングホットライン(県薬・薬事情報センター)まで、e-mail(kpa-di@po2.synapse.ne.jpにて問い合わせる(言い間違い、聞き間違い等を防ぐため。FAX:099-202-0569でも構わないが、不在時、時間外に対応できないので、e-mailがよい)。

<参考資料>

1)WADA国際禁止表国際基準 (JADA日本語版)の最新版https://www.playtruejapan.org/code/provision/world.html

当該成分が禁止物質に該当しないかを確認するとともに注意点を確認。

WADA版が日本語版に優先する。

2)薬剤師のためのアンチドーピングガイドブック(最新版):2019年版 https://www.nichiyaku.or.jp/activities/anti-doping/about.html

当該成分が禁止物質に該当しないかを確認するとともに注意点を確認。

3)当該軟膏の添付文書:PMDAで検索 http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/

経皮吸収の程度や消退の見積もり。

4)同一成分または類似成分の注射剤の添付文書:PMDAで検索 http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/

血中濃度変化や消退を参考にする。

5)WADA検査テクニカルドキュメント

検査機器の最低性能要件などがわかる

例えば、WADA Technical Document – TD2019MRPL:https://www.wada-ama.org/sites/default/files/resources/files/td2019mrpl_eng.pdf

 糖質コルチコイドに関する最低性能用件は、30 ng/mL。注意:これは、閾値や最小検出濃度を表していない。

**************

問い合わせのあったステロイド軟膏の成分は糖質コルチコイド。

*WADA禁止表のS9に相当する。

SUBSTANCES & METHODS
PROHIBITED IN-COMPETITION

S9. GLUCOCORTICOIDS
All glucocorticoids are prohibited when administered by oral, intravenous, intramuscular or rectal routes.

競技会時には、糖質コルチコイドの経口使用、静脈内使用、筋肉内使用又は経直腸使用はすべて禁止される。

→ 競技会外での使用は禁止されない。また、上記以外の投与経路(外用、関節内・関節周囲・腱周囲注射等)での使用は常時禁止されない。ただし、糖質コルチコイドの使用は監視プログラムに掲載されるため、モニターされる。

*軟膏使用時の血中濃度

例えば、アンテベート軟膏(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)の場合

健常成人男子の胸背部に、本剤軟膏5g又は10gを1日14時間3日間密封塗布したとき、塗布期間中血中には2 ng/mL前後の未変化体が検出された。
血中の未変化体は6β-ヒドロキシベタメタゾン17-ブチレート、6β-ヒドロキシベタメタゾンなどに代謝され速やかに尿中へ排泄された。

*関節内注射した場合の血中濃度

例えば、リンデロン懸濁注(ベタメタゾン酢酸エステル・ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム配合水性懸濁注射液)の場合

関節リウマチ患者の膝及び足首にベタメタゾン酢酸エステル4mg及びベタメタゾンリン酸エステルナトリウム1.32mg含有水性懸濁注射液を単回関節腔内注射したときの血漿中ベタメタゾン濃度。

関節腔内注射後1〜3時間で最高に達する(30-40 ng/mL)。6時間以後次第に下降するが,48時間後にも血漿中に存在した。(測定法:RIA)