公益社団法人 鹿児島県薬剤師会

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アスリートの貧血予防に対する注射用鉄剤の適正使用について(厚労省よりの事務連絡)

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一般紙などの報道で既にご存知かもしれませんが、アスリートの貧血予防として鉄剤注射が安易(?)に利用され、健康被害が発生してしています。それを受け、スポーツ庁から注意喚起「不適切な鉄剤の静脈内注射の防止について(依頼)」が発せられ、それを受け厚労省から事務連絡が発せられています。
鉄剤注射ではありませんが、県内のアスリートからの相談の中にも、安易な(医師の診断等をうけていないと考えられる)経口鉄剤等の使用が疑われる事例があります。
中には、チームぐるみで医療用医薬品である(鉄剤、ビタミンB12、ビタミンC製剤等)をサプリメントと思い込んで使用している事例も見受けられました。(下記参照)
アスリートに限らず、適正量の食事の摂取を欠くと相対的エネルギー不足に陥り、身体に種々負の影響が出てきます。
ジュニアの段階で、そのような状態に陥ると、将来のアスリート生命だけでなく、身体事態に悪影響が出てくることがあります。
兎角、成績ばかりに目が行ってしまい、選手だけではなく、指導者等もその罠に落ちてしまうことがあります・・・
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事 務 連 絡
平成 31 年1月 11 日
都 道 府 県
各 保健所設置市 衛生主管部(局) 御中
 特 別 区
厚生労働省医政局総務課医療安全推進室
厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課
注射用鉄剤の適正使用について
鉄欠乏性貧血の治療を目的として承認されている注射用鉄剤については、経口鉄剤の投与が困難又は不適当な場合に限り使用することとされています。
今般、鉄剤の静脈内注射について、不適切な利用の実態があることが確認されたことを踏まえスポーツ庁競技スポーツ課長・政策課長・参事官(地域振興担当)より、別添のとおり「不適切な鉄剤の静脈内注射の防止について(依頼)」が発出されたところです。
鉄剤の静脈内注射は、鉄分の過剰摂取につながりやすく、急性および慢性の副作用を引き起こすおそれがあります。
つきましては、別添の通知の内容に御留意の上、鉄剤の使用に当たっては競技者及び関係者の希望によるのではなく、添付文書を熟読し、医学上の必要性を判断し、適切な対応をしていただけるよう、貴管下関係者、病院、診療所、薬局等に周知方お願いします。https://www.mhlw.go.jp/content/000467931.pdf
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2019/1/19(土) 競技力ステップアップ研修会(中体連、高体連、体育協会共催)で使用したスライドの一部
漢方薬・生薬に関しては、明らかに禁止物質である成分を含む生薬(麻黄、半夏、丁子、鹿茸、海狗腎、麝香、南天実、細辛、呉茱萸、附子、イボツヅラフジ等)が配合されている場合以外は、判定不能(成分を全て特定できない。生薬は産地や最終時期により成分が変動する等の理由)。

NSAIDsの重複投与が疑われるような相談あり。

TUE(治療使用特例: https://www.realchampion.jp/process/tue)が必要と考えられる事例等もあり。(TUE書式:https://www.realchampion.jp/download/
すべての選択的および非選択的ベータ 2 作用薬は、すべての光学異性体を含めて禁止される。
但し以下のものは除く:
● 吸入サルブタモール(24 時間で最大 1600μg、いかなる用量から開始しても 12 時間ごとに 800μg を超
えないこと);
● 吸入ホルモテロール(24 時間で最大投与量 54μ g);
● 吸入サルメテロール(24 時間で最大 200μ g)
尿中のサルブタモールが 1000ng/mL、あるいは尿中ホルモテロールが 40ng/mL を超える場合は、治療を意図した使用ではないため、管理された薬物動態研究を通してその異常値が上記の最大治療量以下の吸入使用の結果であることを競技者が立証しないかぎり、違反が疑われる分析報告(AAF)として扱われることになる。
メプチン(プロカテロール )を使用しているアスリートが毎年居るが、メプチンは使用禁止。TUE申請しても、代替薬(ホルモテロール、サルメテロール、サルブタモール)があるため、ほぼ認められない。
糖質コルチコイドの吸入は禁止されないが、経口、注射、直腸投与等は禁止。
毎年、経口糖質コルチコイド使用者がいる。
アンチドーピング相談を受ける場合は、正確な商品名の確認が必要。
例えば、一般用医薬品の総合感冒薬は、同一ブランド名で複数の種類があり、商品名の最後のアルファベット一文字が異なるだけで、禁止物質が配合されていたり、しなかったりする。
2018年の相談においても、品名が不正確であり判断できない地雷が20件ほどあった。

医薬品によるドーピングを防ぐには、薬局で、調剤、あるいは販売する際、国体レベル以上(あるいは、ドーピング検査が実施される大会(2018年度 国内のTUE事前申請が必要な競技大会一覧:https://www.playtruejapan.org/code/tue.html)出場予定者)については、注意が必要。患者がアスリートであるか等の確認が必要。

それぞれの薬剤師もスポーツファーマシストの資格を取る、取らないは別にして、アンチドーピングに関する知識の習得は必須。
サプリメントに関しては、今のところJADA認定商品(https://www.playtruejapan.org/jada/qualified.html)であれば、問題ないと判断している。
しかし、JADA認定商品に関しては、公正性・透明性等に関する批判も多く、近い将来、新しいシステムに移行する予定がある。
Informed choice(https://www.informed-choice.org/)(国内:https://biohealth.com/anti-doping.html)、Informed sport(https://www.informed-sport.com/)、NSF(http://www.nsfsport.com/)などの第三者検査システム等を合わせて、第三者検査の質をアスリート(または、そのサポーター)が自ら判断し、自分の責任で商品を選択することになる。インターネット等を通じた海外からの個人輸入は要注意。
ただし、サプリメントの使用については、栄養評価等を実施し(実際には難しい。血液検査をして、肝機能、貧血、窒素の変動などを観ることで推定することもできる。身長、体重などについて定期的に記録をつけることなども・・・)、その必要性を十分に考慮する必要がある。(アスリートの栄養摂取と食生活:https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/ikusei/doc/k3-34.pdf
基本的に、必要なエネルギー、栄養は食事で賄うことができる。
ジュニアに関しては、原則として、サプリメントの使用は控えるべき。
 
相対的エネルギー不足になると身体に悪影響がでる・・・例:http://www.waseda.jp/prj-female-ath/problem/red_s/
アスリートの訴えや様子に留意: 直ぐに息切れする、疲れやすい、頭痛がする、顔色が悪い、食欲がない、競技成績が伸びない等はないか?
貧血に関しては、適切な治療と発見が必要
鹿児島での開店日に、早速、列に並んで500g食べたとおっしゃる麦酒腹の指導者もいましたが・・・お腹周りが増えるのに費やされているような・・・